通信販売では数多くの商品が販売されていますが、日本において初めて通信販売がされたのは農業用品であったとされています。通信販売の歴史は意外と古く、江戸時代から通信販売という方法が行われていたとも言われています。
現在も京都に実在する企業である「タキイ種苗」は、1835年(天保6年)に創業された由緒ある農業用の通信販売を行う企業です。商品としては野菜や花の種子、苗木などです。品種改良においては世界的な評価をうけるほど、優れた企業力をもっています。通信販売のきっかけとなったのは、有名な「天保の大飢饉」です。天保年間は深刻な飢饉にみまわれた時期でしたが、同時に全国各地で百姓一揆の起きた頃でもありました。荒れた状況の中でもきちんと育つ種子が、かなり切実に求められていたのです。
そこで、タキイ種苗の当時の名称である「種子本店」では全国からの希望により丈夫に品種改良した種子を注文に応じて発送していきました。それは本社の京都だけでなく全国からも求められるようになり、状況に応じて飛脚などで種を送っていたという記録があります。まさに通信販売の走りであると言えます。
その後「種子本店」は1905年(明治38年)に目録(カタログ)によって種苗販売を本格化させるようになりました。事業が波に乗った後には「種苗」「農薬」「肥料」「農具」のほか、「日常雑貨」などさまざまな商品を同じカタログ内で取り扱うようにしていったといいます。